PECSは、B.F.スキナーが定義した「言語オペラント」を理論的根拠としています。PECSの各フェイズごとに、使われている言語オペラントは違います。それについて、少し説明します。

【フェイズⅠ】
フェイズⅠは、子どもが“視界にある”ほしい物を、対応する絵カードを手渡すことで手に入れます。ここでは、「ほしいという状況」(これを「確立操作」という)と「視界にある好子アイテム」が先行事象であり、これに「要求したアイテムを受け取る」という結果事象が伴います。そこで、ここでは複合した(純粋でない)言語オペラントである「マンド-タクト」ということになります。なぜなら、要求すること自体はマンドなのですが、好子アイテムは目に見えていて、それを指し示すタクトの要素も含まれているからです。

【フェイズⅡ】
一方、フェイズⅡでは、子どもは“視界にない”ほしい物を、“視界にない”相手に要求するので、これは純粋な「マンド」ということになります。

【要求表現をいつ教えるか】
『イラストでわかる ABA実践マニュアル: 発達障害の子のやる気を引き出す行動療法』(藤坂龍司・松井絵理子著、つみきの会編)は、ロヴァス流のDTT(Discrete Trial Teaching)に基づいて書かれている本ですが、この中で「要求表現」を教える段階について、「単語の模倣ができるようになったら、物の表出的命名と並行して要求表現を教えはじめましょう」(p.62)という記述があります。単語の模倣は言語オペラントで言えば「エコーイック」、物の表出的命名は「イントラバーバル-タクト」に当たりますから、マンド(要求)を教える順序としては、PECSとは大分違います。方法論の違いでどちらが良い悪いということではありませんが、DTTではその他前提条件の課題として、マッチング、動作模倣、音声指示 、目合わせ、受容的命名などがあり、フェイズⅠで「マンド-タクト」から入って、フェイズⅡで「マンド」に進むPECSの方がかなりシンプルです。

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